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最初は自分が引き受けると言った。だが、それは全員から却下された。第十一管区隊を率いている自分が万が一戦死してしまったら、その後、隊の統制が取れなくなってしまう、というのが理由だった。
だとすれば、誰かに引き受けてもらうしかない。だが本音を言えば、ヴェルドレにその大役を負わせたくなかった。個人的に気に入っているかどうかの話ではなく、単に彼がカミーユの弟、という負い目があったからだ。
彼女を守れなかった自分が、彼女の弟まで死に目に晒してしまうのはどうしても受け入れがたかった。それにできればヴェルドレには姉の仇ともいえる邪教の指導者を斬らせてやりたい、という想いもあった。
だが、他の者は恐れをなしたのか、誰も志願しようとはしなかった。無論、無理やり命じることもできる。だが、この手の危険が大きい役目はできれば志願してきた人間に任せたかった。意に反して命じられた人間は、往々にしていざという場面で腰が引けてしまうことがあるからだ。特に命がかかった場面では。
長く息を吐いた。
「どうして、私に任せてくださらないのですか?」
ヴェルドレが両手を机の上に乗せて身を乗り出した。
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