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翌朝、冬晴れの空のもと、コーヒー片手に窓から景色を眺める。
そしてふと、窓際にひっそりと置かれたいくつかの鉢植えに視線を向けた。
「前から思ってたけど、沖田さん花好きだよね。いっぱいある」
「はは、そうだね。花って愛情掛けた分綺麗に咲いてくれるし」
沖田の言葉通り、花たちは見事に咲き誇っている。
鉢植えも綺麗にされていて、普段から気に掛けて育てられていることが窺えた。
そしてふと、懐かしさを感じる花に目が留まる。
「この花...なんか面白い形してるね」
「ああそれ、錨草っていうんだ。昔から俺、その花が一番好きなんだよね。花の形が船の錨に似てるでしょ」
「あ、ほんとだ」
言われてみれば、たしかに似ている。
独特の形状をした花弁をまじまじと見つめて、沖田が好きなものは俺も好きだなと暁はぼんやり考えた。
「水っていつやるの?今やっていい?」
「はは、暁水やりしてくれるの?錨草はあんまり水やり必要ないんだけど、そろそろやらないといけないから、せっかくだしお願いしよっかな」
「おっけ、任せて!」
キッチンで朝食を作る沖田を横目に暁は鉢植えに水をやって、元気に育てよと心の中で声を掛ける。
自分一人でいたら絶対に訪れることのない、優雅な朝だ。
それもこれも沖田が傍にいてくれるお陰でしかない。
「沖田さん、今日晴れてるしデート行かない?」
「...え、ほんと?それはめちゃくちゃテンション上がるな。俺張り切って準備しちゃうよ」
「沖田さんは張り切らなくてもかっこいいから大丈夫だよ」
「はは、またそんなこと言って。暁は相変わらず俺のこと喜ばせるの上手いね」
二人で和気藹々とそんな会話をしながら、朝の食卓を囲んだ。
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