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何の計画もないまま二人で外へ出て、駅前にあるカフェへと足を運ぶ。
まだ朝とはいえ休日のためか、店内はそこそこ混んでいた。
ひとまず空いていた窓側のカウンター席を確保し、後からコーヒーを持ってやってきた沖田に声を掛ける。
「沖田さんごめん、カウンターしか空いてなかった。ここで平気?」
「うん、大丈夫。ここなら暁の隣に座っても不自然じゃないし、寧ろ嬉しいかも」
「はは、またそんなこと言って。あ、コーヒーありがとね」
昨夜、沖田と身体的な距離が縮まったことで以前よりも恋人として自然に接せられている気がする。
暁はそんなことを考えながら、窓の外に視線を向けてコーヒーを飲んでいる沖田の横顔を眺めた。
「ほんと、沖田さんって横顔綺麗だよね」
「...え、」
「あ、いや、ごめん。思ったことそのまま口にしちゃった。忘れて」
「....」
暁は無意識に口をついた言葉に慌てて弁解をする。
しかし沖田は照れたように視線を伏せて、ぽつりと呟いた。
「暁はさ、俺の顔...好き?」
「へ...?....えっと、...うん。正直すごい好き。ちなみに性格も大好き」
「...そっか。嬉しい。暁にそんなこと言ってもらえるなんて夢みたいだよ」
「はは、大袈裟だって」
自分の言葉にそんな反応をされたら、嬉しいに決まってる。
暁は照れ隠しするように目の前のコーヒーを啜って、ぼんやりと外を眺めた。
そして、ずっと気になっていたことをふと尋ねてみる。
「沖田さんは、俺なんかのどこを好きになってくれたの。...正直さ、俺今でも半信半疑っていうか。沖田さんみたいなかっこよくて性格も良くて完璧な人が何で俺と付き合ったりなんか....」
「なんか、じゃないよ。暁の全てを俺は愛してる。高校の時からずっと...、ずっと好きだったんだ」
「....ずっと、」
暁の求めるような明確な答えなど何一つ返ってこなかった。
それでも沖田の言葉には重みがあって、それと同時に陰のある感情も読み取れる。
これ以上はあまり深入りしないほうがいい。
好きと言ってくれているなら、そして今、落ち着くべきところに落ち着いているのなら、そこはさして重要なことじゃない。
暁は言い聞かせるようにそんなことを頭の中で考えて、僅かな違和感からは目を逸らした。
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