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記憶が戻らないまま沖田と過ごし始めて、はや1ヶ月。
年末を迎え、暁は実家に帰省していた。
「あんたね、連絡くらい寄越しなさいよ!あれからまた一切連絡なくてあたしもお父さんも心配してたんだからね」
「ごめんごめん、まあ連絡無いのはそれだけ充実してるってことで。良いことでしょ」
「またそんな調子のいいこと言って。ほら、早く着替えてきちゃいなさい。外寒かったでしょ」
実家特有の騒々しさに、どこか懐かしい気分にもなる。
暁はそのまま残されている自室へと向かい荷物を適当に放り投げ、部屋着へと着替えて居間に戻った。
こちらに戻ってくる前、同じ高校に通っていた沖田にも一緒帰省しないかと声は掛けてみたものの、うちには誰もいないからと笑ってはぐらかされてしまった。
もしかしたら家庭環境が複雑なのかもしれない。
そこに関しては本人が納得しているなら暁も強く誘うわけにはいかず、少しばかり心残りがあつつも久々の実家の空気を味わった。
「暁、暇なら洗濯物取り込んでくれない?今日午後から雨なのよ」
「じゃあ外干さなきゃ良かったじゃん」
「あんたね、冬はただでさえ洗濯物乾きにくいんだから。一人暮らししてるなら少しはわかるでしょ」
「あーはいはい。やりますやります」
母親の小言は相変わらずだ。
暁は重い腰を上げて、ベランダへと続く窓を開ける。
窓を開ければ冬特有の突き刺すような寒さが襲ってきて、思わずぶるりと体を震わせた。
「...うぅ、寒...」
普段1人暮らしな分、取り込む洗濯物の量も多い。
まだ1時間も経っていないというのに、実家イベントが数多くあって帰ってきたんだなと改めて実感した。
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