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お兄ちゃんは、その言葉を聞いて、顔色を変えた。
「なに?! 私が、ずるいとはどういう意味だ?!」
本郷くんは、防具を脱ぎ、涙を拭いて、お兄ちゃんに言った。
「あなたは、全てを持っている……。外国の貴族かなんかで、カッコよくて、日本語もペラペラで、頭も良くて、スポーツも万能で、そして……柴咲さんといつも一緒にいられる……」
そして、本郷くんは、続けた。
「僕は、剣道しか、自信のあるものはなかったのに、こんなに簡単に、あなたに負けてしまった……。僕なんて、あなたに比べたら、どうでもいい存在なんだ……」
本郷くんは、そう言うと、また涙を流した。
そんな本郷くんに、お兄ちゃんは表情を緩めた。
「本郷航介……。お前は、どうでもいい存在なんかじゃない……。お前の夢は何だ?」
「えっ?」
いきなり、夢は何だと訊かれた本郷くんは、きょとんとした。
「夢……ですか?」
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