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そのあたしに向かって、お兄ちゃんは、もっと深刻な表情になった。
「それで、叔父が……現国王が暗殺された……」
「ええっ?! お、お兄ちゃん! 本当ですか?!」
あたしも、震えが来た。
現国王と言えば、お父様の弟様だ。
お父様とお兄ちゃんが、日本に来るにあたって、王位を譲ったと聞いていた。
お兄ちゃんは、続けて言った。
「美優……僕らは、即刻シンファ王国へ戻らねばならない。このままだと、国民の命が危うい。父と共に、すぐに荷物をまとめて、日本を発つ」
「お、お兄ちゃん……そんな急に?!」
あたしは、それしか言葉が見つからなかった。
お兄ちゃんは、そんなあたしを、正面から見つめて言った。
「もし、クーデターを収めることが出来たら、日本へまた、戻ってくる。その時に、今さっきの僕の告白の返事を聞かせてくれ……。美優、それまで元気で」
お兄ちゃんは、そう言い残すと、踵を返して、お父様と一緒に体育館を走り出て行った。
あたしは、返事も出来ずに、おろおろと、二人の後ろ姿を見つめているだけだった……。
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