ナツメといた夏

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「お盆だからね。それにもうすぐ……」  僕は今日が何日なのかも忘れていた。  夏休みも開いている学校の自習室と図書館もこの時期はお休みだ。  そして、姉さんの7回忌もそこまで来ていたのに何の準備もできていないことを思い出した。 「ごめん……」  それしか言えなくて、僕は無言になる。 「そこは、気にしなくていいよ。覚えてくれていただけで十分。死んだものより、生きているものを大切にすればそれでいいと私は思っているわ」  それでも気にして落ち込む僕を、気にも留めずに姉さんは続けた。 「それより、聞いたことあるでしょ? お盆にご先祖様が帰ってくるの。私はお盆が終わってすぐが私の命日だから、その前後も含めて帰ってこられるから毎年夏はみんなに会いに来ていたのよ」  姉さんの話によると、帰ってきた姉さんはナツメの体を借りて毎年1週間過ごしていたらしい。
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