ナツメといた夏

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 それから僕らは短い夏を心ゆくまで楽しんだ。  心配して見に来てくれた近所に住むハルキが、小学校の友人たちを集めてくれて毎日くたくたになるまで楽しんだ。  もちろんナツメになっていた僕も一緒に。  海、バーベキュー、釣り、山登り、夏祭り、花火と盛りだくさんで姉さんはとにかく楽しそうだった。  バイトにさえ心が躍るようで見ているこっちまで楽しくなった。  陸上ばかりで勉強はさっぱりだった姉さんの横でナツメの姿のままで僕が問題を解いたが、雑談に興じる時間も少なくなかったのに短い時間でずいぶんとはかどった。  周りには僕の言葉はにゃーとしか聞こえない。  時たま姉さんが女性っぽい話し方をするからはらはらしたが、誰もが楽しい日々に夢中で気にした様子もなかった。  僕は姉さんが帰ったら僕自身でもう1度こんな日々を体験しようと心に決めた。
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