ナツメといた夏

16/19
前へ
/19ページ
次へ
「メイ、メイでしょう?」  そのよくとおる声には覚えがあった。  高校の陸上部のキャプテンのミハル先輩だ。  母さんに反対されても心のどこかで諦めきれなかった陸上部を僕はことあるごとに眺めていた。  彼女は棒高跳びを得意とし、しなやかな手足で大きく飛ぶ。  まるで鳥のようだと思うほどに。  その日であった彼女は普段とは違うおとなし気な雰囲気だった。  ナツメをメイと呼ぶ彼女はとても楽しい人だった。  ころころと笑い、途切れることなく話す彼女はとてもかわいらしい人で、とても年上とは思えなかった。  ナツメはどうやらこの家の庭でお昼寝し、彼女に餌をもらって帰っていたようだ。  毎日来ていたナツメが全然姿を見せないことを、彼女は心配していたらしい。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加