ナツメといた夏

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「夏休みが終わったら、この度はちゃんと自分で青春を謳歌するのよ。ヒロムなら大丈夫だから、高校での友人関係もちゃんと築きなおすのよ」  今はもう当時の姉さんよりもかなり背が高くなっていたが、いつまでたっても子ども扱いは終わらない。 「母さんのことは私には何ともしてあげられないからヒロム、あんたが頑張るしかないの。ちゃんと調べれば助けてくれる制度はいろいろあるから、こないだまでみたいな無理しちゃだめよ?」  お別れの時になって急にいろいろ気になりはじめたようだ。 「姉さん、昔の母さんみたいだ」  優しく明るい、それでいて心配性だった母さんとの懐かしい日々が思い出される。  いつかまたそんな母さんに戻る日が来るのだろうか? 「父さんはこっちでしっかり怒っておくから許してあげてね。子供を持つ父親としては許されないことをしたかもしれないけど、父さんは彼なりに一生懸命だったのよ」  僕は自分が余計なことをせず、勉強さえしていれば母さんがそれなりに穏やかでいたと思っていたが、父さんにはそうではなかったらしい。
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