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姉さんの陸上を始めるきっかけが父さんだったこともあり、母さんから浴びせられる暴言、向けられる冷たい視線に耐え切れなかったようだ。
父さん自身が自分を責めていたので、僕の助けを求める言葉さえ非難にしか思えなかったのだろう。
自分でしでかしたことを後悔し、僕や母さんに会うのが怖くて今年はこっちに来なかったというちょっと情けない父さんだが、来年からはきっと来るように説得しておくからと姉さんは言った。
父さんが戻ってきても鈍感な僕はきっと気づかない。
それでもお盆と命日は帰ってきていると信じてナツメの目をじっくりと見ようと思う。
父さんかもしれないナツメに伝え続けようと思う。
誤解をしたまま逝かせてしまった父さんを少しでも安心させるために。
姉さんは最後まで僕を心配して何か言い続けていたが今はもう何も聞こえない。
青い空に溶け込むようにその声は消えていった。
僕はいつの間にか僕自身に戻っていた。
ナツメは今日の空と同じ色の目をして、何事もなかったように僕の膝でくつろいでいる。
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