ナツメといた夏

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 姉さんの困った癖は救助だったから、我が家はいつも何かしら動物のいる家だった。  どの動物も元気になると不思議と居つくことはなく、野に帰り山に帰った。  そんな中ナツメだけは違った。  元気になってからはいつも好き勝手に出歩いていたが、出ていくことはなかった。  かなり小さかったので、ここ以外に居場所を思い出せないのかもしれない。  雨の日以外の昼間はどこにいるのかさえわからず、餌も食べなくなったナツメに姉さんはずいぶんと気をもんでいたが、毛並みはつややかで、体型もどことなく丸みを帯びていき心配は杞憂に終わった。  どこかにレストラン代わりにしている家でもあったのだろう。  何度かこっそりつけてはみたが、尾行はいつも失敗に終わった。  そんなナツメだったが、どこへ出かけていても家に戻らない日はなかった。  猫に時間がわかるなんてありようはずもないのに、いつもピッタリ同じ時間にナツメは家に帰ってきた。  廊下の柱時計がボーンと6回鐘を鳴らすと同時に、玄関の小さな猫用の扉からにゃあときまって顔を出すのだ。
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