ナツメといた夏

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 姉さんが二度と戻ることがないとわかったとき、母さんの心はその衝撃に耐えられなかった。 壊れてしまった母さんは僕にひどく執着しはじめた。  学校の宿題さえやっていればひたすら遊んでいようと気にもとめなかった母さんは、人が変わったように厳しくなり僕の自由を次々と奪った。  強引に塾に入れたかと思うとスポーツも禁止され習い事もやめさせられた。  母さんは姉さんをスポーツにとられたように感じていたのかもしれない。  はじめは急に変わってしまった母さんに反発し抵抗もしたが、徐々にそれもしなくなった。  抵抗するたびヒステリックに怒鳴り、パニックに陥る母さんは明らかに精神を病んでいた。  そんな母さんに疲れたのか、父さんは仕事に逃げ家に帰らなくなっていった。 何を言っても我慢しろというばかりの父さんに失望した時、僕の中でも何かが壊れた。
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