23人が本棚に入れています
本棚に追加
どれくらいたったかはわからない。
「大丈夫? まさか先客がいるなんて思わなくて」
目が覚めた僕をのぞき込むその顔は間違いなく僕の顔だった。
「ドッペルゲンガーにあったらどうなるんだっけ」
思わずそうつぶやくと、僕の顔をしたなにかは爆笑した。
僕は本当の僕が笑った記憶をたぐり寄せながら、おなかを抱えて笑い続ける僕のようなものを眺めていた。
「安心して。ドッペルゲンガーじゃないから。ヒロムはまだ死なないよ」
まだ目に涙を浮かべ笑いをかみ殺している僕ではない何かは、僕を抱き上げた。
急激な上昇を感じた後の慣れない浮遊感に僕は思わず目をつぶる。
「目を開いてよく見て。わかる? ヒロムは今ナツメなの。そして私がヒロム」
目の前には鏡、そしてその中には僕とナツメが映っている。
最初のコメントを投稿しよう!