ナツメといた夏

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 ナツメが我が家にやってきたのは7年前のクリスマスのことだった。  その年の冬は例年になく厳しい寒さで、特にその日は珍しく雪もちらついていた。    寒空の下、震えるナツメを見つけた姉さんは迷わず自分のコートを脱ぎ、ナツメを家に連れ帰った。  ナツメはコートに包まれてなお震えが止まらないようだったが、コートの中は常に薄着だった姉さんの唇の青さのほうが心配だったことを覚えている。  ナツメの名前は姉さんがつけた。  クリスマスに拾った猫に夏の名を不思議に思い尋ねたら、目が夏の青空の色だからと姉さんは言った。  確かに印象的な澄んだ青色の目は印象的だった。  かなり衰弱していたナツメだが、姉さんの献身的な看病で一命をとりとめた。  生まれたばかりの小さな猫は想像以上に手間のかかる生き物で、姉さんは寝る間も惜しんで世話を焼きかわいがっていた。  まだ小学生で遊ぶのに夢中だった僕は、ナツメにほとんど見向きもせず興味もなかったが、ナツメは僕を見つけると嬉しそうに喉を鳴らした。  どんなにかわいくナツメがすり寄ってきても、僕はいつも面倒くさそうに姉さんのほうに押し付けるだけだった。
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