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「今回発表された政策の名前は『ウサギ解禁』です」
落ち着き払った口調で、読み上げられた言葉に思わず目を上げた。
「これは、日常生活の中で積極的にウサギの耳、通称うさ耳を身に着けようという内容です。一部テーマパーク内でキャラクターのカチューシャをつけることでお互いに仲間意識が生まれ、世代を超えて仲良くなりやすいことをヒントに生み出されたとのことです」
テロップには、明朝体で「『ウサギ解禁』を受けて街の反応は……」としかつめらしい文字が並んでいる。
野菜を刻む手を止めてテレビにくぎ付けになる。
画面が変わり、頭にウサギの耳をつけた若い男性のキャスターが、『ウサギ解禁』と書かれたパネルを持って街の人たちにインタビューしている様子が映し出される。
「わーかわいい、めっちゃいいと思います」
「なんかちょっと恥ずかしいけど、私たちの年代にもわかりやすくていいと思います」
20代前半と思しき女の子たちは、うさ耳をつけたキャスターをみてはしゃいでいる。
「馬鹿にしてんのって感じだね、国民の声をもっときいてほしいよね」
「話にならないですよね、自棄になってるんですかね」
対して、男性陣は一様に痛烈な批判を浴びせる。
「このように、この発表を受けた街の声は賛否両論です」
うさ耳キャスターは後ろをとおる女子高生に「かわいい」と声をかけられてにやけながら締めくくった。
「はい、では次のニュースです」
画面の中の小枝さんはいたって冷静に、アジアで起きている異常気象に話をうつした。
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