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「お待たせいたしました」
汐里の目の前に置かれたのは大きなパフェ。
水色が基調のチョコミント味のパフェである。
チョコミントアイス、プリン、ゼリーが生クリームに彩られ、グラノーラが良いアクセントになっている。
キウイやイチゴ、ピーチなどフルーツも盛りだくさん。
スプーンですくわれ、汐里の口の中へと滑り込む。
「う~ん、幸せ」
同じものが三つ並ぶテーブルに向かい合い、汐里、麻耶、咲子は嬉しそうにきゃっきゃはしゃいだ。
夏はやっぱりミントが美味しいねと笑顔だ。
「夏と言えばさあ、汐里来週誕生日でしょ?」
「だね。三人とも二十歳になったら、一緒にお酒飲みに行ったりもできるよね」
咲子と麻耶は、お互いの顔を見ながら「ねー」と笑い合っている。
汐里の誕生日は来週八月十一日である。
三人とも二十歳を超えるのはもうすぐなのだ。
「あ、でも誕生日の日はダメなの。仕事だし……約束があるから」
汐里は頬を染めながら二人に言った。
「そんなの分かってるよ~」
「樹くんと約束してるんでしょ?」
あははと二人は笑っている。
どうして分かったのだと言わんばかりに、汐里は驚いた表情を見せた。
「分かんない方がどうかしてるよね」
「そうそう。一緒にどこか行くの?」
そう言われ、汐里は顔が真っ赤になってしまった。
「え!違うよ?どこも行かないもん。樹くんのお店に行くんだもん」
「きゃーっ!そっかそっか!汐里は樹くんのお酒が飲みたいって言ってたもんね!」
「樹くん、汐里のためだけにカクテル作ってくれるんだ!いいないいな~!」
わいわい囃されて、汐里は先ほどより顔が真っ赤だ。
恥ずかしさを紛らわせるために、ミントアイスをガバッと口へ放り込んだ。
冷たさが口に広がり、少しは頬の熱が引いた気がした。
「うん!その日、お店を貸し切ってくれるんだって」
「ええええーっ!?めっちゃすごいじゃん!」
「羨ましい~!」
きゃーきゃーと騒ぎ立て、マンガのように背景に花が飛び交ってとても賑やかだ。
「ねぇねぇ、最近はどこか行ったりしたの?」
咲子の言葉に、麻耶が興味津々に頷いている。
汐里はプリンをすくって飲み込んだあと、はにかんで答えた。
「うん、この前バイクに乗せてもらってお出かけしたの」
麻耶と咲子は、一瞬動きを止めたあと、再びキャーキャー言い始めた。
「バイクーっ!?」
「えー!樹くんバイク乗れるの!?」
かっこいいかっこいいと大騒ぎだ。
きっかけは、とある日のことだった。
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