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平日だが、仕事は休みの午後。
眩しさに目がくらむような良いお天気だ。
パンにドーナツ。
所狭しと立ち並ぶお店を見ながら歩くのはとっても楽しい。
汐里はそんな景色を眺めながら嬉しそうに笑った。
樹がその姿を見て口元に笑みを浮かべている。
そのうちに二人は一軒のパン屋に入った。
トングを構えてトレーを手に持ち、どれを買おうか考えているとわくわくしてくる。
お店の中に漂うパンの良い香りにうっとりしてしまう。
「幸せそうだな」
「うん!どれもこれもおいしそうだから迷っちゃう~」
言いながら目を付けたのはアップルパイ。
ふわりと甘い香りが鼻をくすぐってくる。
会計を済ませてパン屋を後にしてからも、汐里は先ほどのアップルパイがよほど気に入ったのか、しばらくそのことについてばかり話していた。
「しおりんの食いしん坊」
「えっ?違うもん!おいしいものには幸せになれる魔法がかかってるんだもん!」
くすくす笑う樹。
すると、道路の端っこでカップルだろうか、バイクに乗った男性の後ろに女性が乗り、あっという間に走り去っていった。
汐里はその一部始終を見て目を輝かせている。
「すご~い!いいな、いいな~!」
また何か、少女マンガ的なキラキラした世界に入ってしまったのだろうか。
「しおりん、ああいうのしてみたいの?」
樹がぽそりと聞いてきた。
汐里は興奮気味に首を縦に振った。
「うん!めっちゃしてみたい!あの女の人いいな~!」
「ふぅ~ん。わりとスピードが出るけど、しおりん大丈夫なわけ?」
スピード。
風を切って走るなんて、青春という感じではないか。
「ジェットコースターは苦手!だけど……」
「じゃあダメだな。危ないし」
樹がばっさり話をぶった斬った。
「えー!?そんなことないもん!樹くん私のことお子ちゃま扱いするんだもん!」
「お子ちゃまじゃん~?」
「もーっ!ちゃんと社会人してるのにー!それに、もうすぐ大人だもん!ほとんどハタチですよーだ」
ぷーと頬を膨らまして怒る汐里を見ながら、樹はくっくっと楽しそうだ。
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