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「へぇ~、そこまで言うなら乗ってみる?」
「え?」
「乗りたいんだろ?バイクの後ろ」
樹の顔を見て、汐里はきょとんとしている。
余裕たっぷりの笑顔が自分の方に向けられ、汐里は目をぱちくりさせた。
「もしかして、樹くん、バイク運転できたりするの?」
「あれ?知らないで言ってたわけ?」
「えーっ!すごいすごいすごーい!!カッコいいー!」
汐里は先ほどとは比べものにならないぐらいに目をきらっきらに輝かせた。
だが、よく考えてみればこういうのは恋人のポジションではないのだろうか。
何も考えずに憧れだけで言ってしまったが、自分は樹とつき合っているわけではないのだ。
言い出したのは自分なのに、いざとなると少しの迷いが生じた。
「でも……それって……私が乗ってもいいのかなって……」
「乗るのか乗らないのか、どっちだ?」
「えぇっ!?の、乗る~!乗せてほしい~!」
樹は、汐里がころころ表情を変えるので笑っていた。
「ははっ。しおりんがそんなに乗りたいなら仕方ないな。いつがいい?」
「ほ、ホントに!?ホントに乗せてもらえるの!?」
困ったような嬉しいような、そんな顔で汐里が尋ねると、樹はニヤッと笑いながら意地悪そうに答えた。
「乗りたいんだろ?しおりんが言うなら特別に乗せてやるって言ってるんだけどな~。迷うんならどうしよっかな~」
「ええ~!やだ~乗りたい~!意地悪言わないで~!」
二人はスマホのスケジュールアプリを見ながら、次の予定を決めた。
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