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占い屋オープンです。
週末のPM21時となると飲み屋街のこの通りは酔っ払いが多くなる。その中にいる20代の男1人と女2人が、占いの看板の前で話し込んでいる。女が男に向かって、腕を組み甘い声を出していた。
「先生……これ(占い)やりましょう!恋愛運とか見てほしい!先生とラブラブの未来があるかも〜」
もう1人の女も負けじと反対の腕にしがみつく。
「先生好きな人いるんですか?どういう人がタイプなんですか?」
両手に女を連れた男は慣れた手つきで2人の腕を外し、柔らかい笑みを2人に向ける。
「僕は長く付き合っている彼女がいます」
それを聞いた女達は残念そうに悲鳴をあげていたが、諦めずにまた腕を組みはじめ、顔をすりよせ何かを言っているが、断られていた。
ーーきっと、浮気でもいいとか言ってんだろ。どんな顔か見てやろう。
「僕は占いとかあまり信じてないんですが……」
男は、柔らかく断っていたが、結局女達に押されて、3人組みは占いをすることにしたらしい。
俺の目の前に占いを信じていないさっきの男が座った。俺は顔を少しだけ上げて男の顔を見た。
ーーやばい!全員うちの学校の先生だ!
すぐに顔を見られないように帽子のツバに隠れた。
タロットを持つ手は異常に汗ばみ、身体の中が一気に熱くなった。カードが手につかない。
ーー早く占って早く帰ってもらおう。大丈夫。ばれてないばれてない。俺は女だ女だ……。
自分に落ちつかせるように心の中で唱える。
俺はロングのウィッグをつけ、濃いめの化粧、つばが長い帽子を深く被り、黒のワンピースを着て変装している。
昔から霊感があった俺は何故かよく占いが当たった。そのおかげで占いをして感謝され嬉しかった事もあり、趣味として母の店先の小さい広場で占いを時折していた。
秋になり少し夜は肌寒くなってるが、酔っ払い達にとっては心地よい温度のようで、占いの待ち時間でさえも楽しんでいるように見える。
結果はまだかまだかと女先生2人は覗き込んでいた。
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