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母は何もできなくなった
それからは、母はぐったりと寝込んだり、突然攻撃的になって大暴れしたりとめちゃくちゃだった。
この時点で母には「双極性障害」という診断が下り、家にいれば死んでやると騒ぎ、父のお金を使いまくったりしたので、頻繁に入退院を繰り返した。本当に浮き沈みが激しく、しかも周期が短いタイプなので、家の中はごちゃごちゃだった。
入院中は、父や祖母が家にやってきて家の事をやってくれたものの、二人とも仕事をしていたためつきっきりになる訳にはいかなかった。
結局は私が母の代わりに家事をしたり、下の弟たちの面倒を見ていた。
大人たちはこぞって、
「しっかりしてるね〜」
「お手伝いか!偉いな!」
「優しい子だね〜」
と褒めてきた。私はひたすらに誇らしかった。
「これからも病気のお母さんを助けてあげてね。あなたはお姉ちゃんだものね」
こうして、「お姉ちゃんだから」「女の子なんだから」「お母さん病気なんだから」の呪いが完成した。
私は本当に大人びた良い子だった。
子供らしいわがままや癇癪も起こさず、母の弱音や狂気も静かに聞きながら家事をこなしていた。
そうすれば周りは褒めてくれる。私は特別偉い子なんだと錯覚する。
「あんた、不気味だよ」
小学校高学年の時に、母にそんな風に吐き捨てられた。
「あんたがしっかりし過ぎると、あたしが母親としてダメと言われてるみたいで惨めになるわ」
その言葉を投げられても尚、私は微笑みながら聞き流した。
一体誰のせいでこうなったと思ってるの?と、腑を煮えくり返しながら淡々と家事をした。
完璧な長女をやったせいで、その皺寄せが大人になって押し寄せることも知らずに。
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