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「私は直接、幻想紳士の捜査に加わったわけではないのですが……」
目の前の刑事が言うことには、先ほどの出来事を見て、定年で引退した先輩から聞かされていた伝説の怪盗の話を思い出したのだそうだ。
「犯人とその場にいた人たちの『時間』を盗んで人質の少女を助けていただいたのではないですか?」
押し黙ったままのおばあさんの様子を伺いながら刑事は続ける。
「犯人の『重力』を盗み、拘束するスタイルは幻想紳士の手法そのままでした」
あ、勘違いしないでいただきたいのですが……と続ける刑事。
「別にあなたを捕まえようとか世間に公表しようとかそういうことではないのです。ただ、お礼が言いたかっただけで……」
言い終えると満足したのか落ち着いた笑みを浮かべ、おばあさんの返答を待つ。
「よく、お分かりになりましたね。優秀な刑事さん」
そして、おばあさんはパチンっと指を鳴らした。
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