名づけたくない記念日

世界中にある記念日を数えて見たら３６５以上あるはずだ。そんなことを中学生の時の担任教師が言っていた。ダルマとタヌキの可愛くないところを足したような中年の男だった。タバコと加齢臭が混じった体臭をしていて、授業もつまらなかったので、人気は皆無だった。そんな教師が珍しくした授業中の雑談だったので、印象に残っていた。
　世界中にある記念日を出来た順番に並べたら、つい先ほど終わった昨日は何番目なのだろう。３杯目以上ということだけわかっているビールを飲み、グラスを置いた。
「おかわりはどうされますか？」マスターが訊ねてくる。
「ビールをください」
　他にも飲んでみたい酒はあったが、挑戦する勇気がなくていつもビールばかり頼んでしまう。職場の先輩には日本酒はビールに比べて体にいいぞ、と嘘か本当かわからないことを言われたが、まだ一度も飲んだことがない。
　スマートフォンで時刻を確認する。日付が変わって１５分ほど経っていた。