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はぁ……と後ろから聞こえてくるため息に、つい優羽は後ろを振り向いてしまった。
「え?」
「好きとか、愛おしいとか嫌われたくないって気持ちは分からなかった。こんな気持ちを持ったのは優羽だけなんだよな」
苦笑している城ヶ崎に優羽の胸はきゅんとする。
「全部がほしいなんて、思ったことなかった。一瞬たりとも離れたくないとか思いつきもしなかったよ」
城ヶ崎が優羽を見る目がまっすぐでとても優しい。その口から語られる告白はとても熱烈な気がする。
恥ずかしいけど、嬉しい。
「そう、なんだ」
「優羽は俺のこと全部知ってるだろう? 別に肩書きに惹かれたわけでも、見た目に惹かれたわけでもなくて、俺のずるいところやダメなところも知っててちゃんと俺を好きになってくれた。それってすげー……滾る」
たぎ……?
「全部がほしいの分かるって言ったよな?」
にこりと笑う笑顔に黒さを感じるのはなぜだろうか。
「い、言った……かな?」
「うん。言った」
ちゃぷっ、とお湯の揺れた音がなぜかとても耳に響いた。
きらりと目を光らせた城ヶ崎が優羽の肩に触れる。
「寒い?」
優羽はふるふるっと首を横に振った。むしろ先程からの城ヶ崎の熱さに湯あたりを起こしそうなくらいだ。
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