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酔いながらもゆらゆら車の振動に身体がゆすられるのが心地よかったのと、もたれかかっていた身体から香る香水がとてもいい匂いだなぁなどと思ったことはぼんやり覚えている。
その辺りから、優羽の記憶はぷっつり途絶えているのだ。
そして、見たことのないベッドの上で、あられもない姿で、隣でというか目の前で整いすぎなくらい整った城ヶ崎の顔が微笑んでいた。
「なあ、もう一回しよ?」
「きゃあぁぁ~」
優羽は城ヶ崎を突き飛ばして、ダッシュで服を着て、逃げた。
優羽は真面目な性格だ。
飲みすぎるということはしたことがないし、それによって記憶を失くすなんていうこともしたことはない。
彼氏もいたけれど、極真面目なお付き合いで、いわゆるワンナイトラブなんてしたことがないのに。
城ヶ崎のことは確かに高校生の頃は憧れていた。けれど、あの文化祭のあとお似合いだとからかわれた城ヶ崎が優羽とのことを否定していたのを見た。
「そんなんじゃないから」
──そっか……そんなんじゃないんだ。
それからは、そういう気持ちは押し殺すようにしていたのだ。
しかも大人になって再会した城ヶ崎はとんでもなく魅力的だし、絶対モテるだろう。
そんな人と付き合うつもりは全くなかった。
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