21209人が本棚に入れています
本棚に追加
「使ってね! あと、ドライヤーはここだから」
その見事な裸体から顔を逸らしつつ、優羽はドライヤーの入ったキャビネットを指さした。
「分かった」
濡れた髪をかき上げて、城ヶ崎が苦笑している。優羽は慌てて洗面所のドアを閉める。
だって、だって……み、見た……。
優羽はそんなに経験がある方ではないけれど、あんなところまでカッコいいってどういうことだろう?
突然目に飛び込んできたから驚いてしまったけれど、いやな気分ではなかった。
とにかく驚いてしまったのと、嫌な気持ちではなかったということだ。
優羽はマグカップを用意して、電気ポットのスイッチを入れる。常備している紙ドリップのコーヒーの袋を開けた。
それをマグカップにセットする。そしてお湯を注ぐ頃には気持ちは落ち着いていた。
すっかり着替えた城ヶ崎がキッチンの前に姿を現す。
スーツ姿の城ヶ崎は先程までの甘さは嘘のように消えてしまっていて、近寄りがたいようなシャープさを身にまとっていた。
「いい香りだな」
「コーヒー飲んでいく?」
城ケ崎がスーツの腕を軽くまくり、腕時計をちらっと確認する。
「もらいたいが、時間がないな」
優羽は目についた携帯用のマグにコーヒーを入れて、城ヶ崎に渡した。
最初のコメントを投稿しよう!