10.あなたが幸せなら私も幸せ

10/13
前へ
/255ページ
次へ
「さあ? 俺は仕事をしただけだ。告訴告発っていうのは実は誰でもできるんだが、弁護士が対応すると警察や裁判所も丁寧だぞ」  岡本は心から感謝していたので、本当に味方となれば心強いのだろうということは分かるが、どうにも腹黒策士感が否めないのはどうしてだろうか。 「岡本くんは昂希くんに幸せになってほしいって言ってたわ」 「ふうん? あいつ、俺のこと好きなのか」  口ではそんなふうに言っているけれど、ワイングラスを口に運ぶ様子で照れているのだと分かった。 「きっと好きなんだと思うわよ」  真顔で言ったらちょっと嫌な顔をするので、笑ってしまった。 「俺をからかうとは、あとで覚えていろよ」  城ヶ崎ににやりと笑って返された。  ──あれ? 間違えた?  食事の後はタクシーで、城ヶ崎の部屋に向かう。タクシーの中でも城ヶ崎は手を繋いでいた。 「ちゃんと、泊まるつもりで来てくれたんだな」  優羽が持っている少し大きめの荷物のことだろう。  スキンケアやメイク道具、明日の着替えなどが入っている。  「あ……週末、一緒に過ごそうって言ってくれたから。そういえば寝巻きを忘れたかも」  優羽は繋いでいた手をくっと引かれた。  城ヶ崎の方にもたれかかってしまう。 「いらないだろ?」  低く耳元で囁かれて、ぞくんとする。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21209人が本棚に入れています
本棚に追加