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「さあ? 俺は仕事をしただけだ。告訴告発っていうのは実は誰でもできるんだが、弁護士が対応すると警察や裁判所も丁寧だぞ」
岡本は心から感謝していたので、本当に味方となれば心強いのだろうということは分かるが、どうにも腹黒策士感が否めないのはどうしてだろうか。
「岡本くんは昂希くんに幸せになってほしいって言ってたわ」
「ふうん? あいつ、俺のこと好きなのか」
口ではそんなふうに言っているけれど、ワイングラスを口に運ぶ様子で照れているのだと分かった。
「きっと好きなんだと思うわよ」
真顔で言ったらちょっと嫌な顔をするので、笑ってしまった。
「俺をからかうとは、あとで覚えていろよ」
城ヶ崎ににやりと笑って返された。
──あれ? 間違えた?
食事の後はタクシーで、城ヶ崎の部屋に向かう。タクシーの中でも城ヶ崎は手を繋いでいた。
「ちゃんと、泊まるつもりで来てくれたんだな」
優羽が持っている少し大きめの荷物のことだろう。
スキンケアやメイク道具、明日の着替えなどが入っている。
「あ……週末、一緒に過ごそうって言ってくれたから。そういえば寝巻きを忘れたかも」
優羽は繋いでいた手をくっと引かれた。
城ヶ崎の方にもたれかかってしまう。
「いらないだろ?」
低く耳元で囁かれて、ぞくんとする。
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