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絶対嫌がるだろうと思ったけれど、渋々ながらも城ヶ崎はフレームには収まってくれる。
撮った写真を確認したら、笑顔の優羽と少し照れている城ヶ崎は口元を引き結んでいて、優羽は笑ってしまった。
「もっと笑えばいいのに」
「そんなんしたことないから、笑えない」
意外な不器用さが逆に微笑ましい。それでも優羽はそんな城ヶ崎がとても愛おしいと思った。
優羽が自分の部屋に帰ったのは日曜日の夜のことだ。
城ヶ崎は優羽のマンションの下まで車で送ってくれたけれど、それはそれは名残惜しそうだった。
「本当に帰るのか?」
「明日から会社だから」
「まあ、会えなくなるってわけではないが。すぐ会えるんだし。それでも淋しいな」
ハンドルにもたれて、子供のように言う城ヶ崎がなんだか可愛らしかった。
そんな城ヶ崎を優羽はそっと撫でる。
「すぐ、会えるよ」
「うん」
身体を起こして、城ヶ崎は助手席にいる優羽を抱きしめる。
「また……な」
「うん、またね」
「これ以上一緒にいたら名残惜しくなるだけだ」
苦笑して、軽くキスをして城ヶ崎は優羽を離した。
(確かに、確かにまた会えるとは言ったけども)
姫宮商事ビルのロビーにいる城ヶ崎を見て、優羽が言葉をなくしてしまっても仕方ないのではないだろうか。
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