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「いいですね、ではぜひ次はご一緒させて頂きたいです。ちょっと、知り合いを見つけたので、本日はこちらで失礼致します」
役員に頭を下げられ、自分も軽く頭を下げた城ヶ崎はまっすぐに優羽の方にやってきた。
早足で逃げようとする優羽の肩を城ヶ崎が掴む。
「逃がすかよ」
──きゃーっっ!
ほとんどハグかというような密着感で捕まってしまって、ロビーが一瞬ザワついた。
役員の微笑ましげな笑顔がつらい。
さすがに後輩の藤井も驚いていた。
小さな声が耳に入る。
「吉野さん、逃げようとしたんですか?」
そ、それは運動神経はあまり良くないけども。陸上部の元エースなんかに勝てるわけはないけども!
そんなかわいそうな子を見るような目で見ないでっ。
「ほーんとうに往生際が悪い」
くすくすと笑う城ヶ崎は楽しそうだ。優羽は知っている。優羽にいじわるする時は城ヶ崎はものすごく楽しそうなのだ。
しかもその笑顔が憎めないから困る。
「お昼、お二人で行ってこられたらいいんじゃないですか?」
そう言った藤井に城ヶ崎は優羽を解いて、顔を向けた。
「君は優羽の同僚?」
「いえ! とんでもない! 後輩です。吉野さんは大先輩ですよ」
慌てて両手を振る藤井に城ヶ崎は笑顔を向けた。
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