11.いちばん幸せ

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「いいですね、ではぜひ次はご一緒させて頂きたいです。ちょっと、知り合いを見つけたので、本日はこちらで失礼致します」  役員に頭を下げられ、自分も軽く頭を下げた城ヶ崎はまっすぐに優羽の方にやってきた。  早足で逃げようとする優羽の肩を城ヶ崎が掴む。 「逃がすかよ」  ──きゃーっっ!  ほとんどハグかというような密着感で捕まってしまって、ロビーが一瞬ザワついた。  役員の微笑ましげな笑顔がつらい。  さすがに後輩の藤井も驚いていた。  小さな声が耳に入る。 「吉野さん、逃げようとしたんですか?」  そ、それは運動神経はあまり良くないけども。陸上部の元エースなんかに勝てるわけはないけども!  そんなかわいそうな子を見るような目で見ないでっ。 「ほーんとうに往生際が悪い」  くすくすと笑う城ヶ崎は楽しそうだ。優羽は知っている。優羽にいじわるする時は城ヶ崎はものすごく楽しそうなのだ。  しかもその笑顔が憎めないから困る。 「お昼、お二人で行ってこられたらいいんじゃないですか?」  そう言った藤井に城ヶ崎は優羽を解いて、顔を向けた。 「君は優羽の同僚?」 「いえ! とんでもない! 後輩です。吉野さんは大先輩ですよ」  慌てて両手を振る藤井に城ヶ崎は笑顔を向けた。
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