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「ご馳走様でした!」
藤井はにっこり笑って席を立つ。
残された優羽の方が呆然としてしまった。なんか、いろんなものを見た気がする。
肩を揺らして城ヶ崎が笑っていた。
「すごくいい子だな?」
「ええ。それは前からそうだったんだけど」
城ヶ崎が目元を微笑ませる。
「優羽、愛されてるな」
「あ……嫌われてなくてよかった」
会社という場所だからこそ、本心など聞く機会はそうはない。優羽は必要がなければ積極的に飲み会などに参加する性格でもないし、あんなふうに思われているなんて、本当に知らなかった。
城ヶ崎がテーブル越しに優羽の手を握る。
優羽はどきんとしてしまった。
「俺は、俺の大事な優羽が会社でも大事にされてて嬉しいよ」
握った手を口元に持っていって優羽のほっそりとした指先に城ヶ崎がそっと口付ける。
「つらかった?」
城ヶ崎のその質問に優羽は横に首を振った。
「残念だな……とは思ったよ。気づかなかった自分も悪かったから」
優羽を見て城ヶ崎は口を開く。
「不貞をするやつは自分が本当に心から反省しなければ、何度も同じことをする。不貞に限らず犯罪なんかもそうなんだが。いけないと分かっていても、バレなければ大丈夫だと思って、心の中のハードルはどんどん低くなっていく。必ず露見するのにな」
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