1.『窓際のお姫様』

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 異動があればその手配などもあり人事異動の時期は繁忙期になる。  秋の異動も落ち着いて、決算にもまだ間がある。今は比較的落ち着いている時期だった。  仕事を終え藤井と二人で会社を出たときだ。 「吉野!」  優羽に向かって爽やかな笑顔を向けてくるのは城ヶ崎だった。 「城ヶ崎くん!」 「あらー、吉野さん焼けぼっくい、すっごくイケメンじゃないですかー」  城ヶ崎を見た藤井は優羽にひそっと耳打ちする。  ──イケメンの焼きぼっくい……。  想像するとちょっと笑えるけど、笑っている場合ではない。 「お疲れ様でしたー」  空気を読んで、にっこり笑った藤井はそっと手を振って二人から離れていったが、そんな藤井に(胡桃ちゃん置いて行かないで!)と心の中で叫んでいた優羽は知らなかった。  藤井に向かってお前は帰れよと言わんばかりのオーラを出していた城ヶ崎がいたことに。  優羽は意を決してにこりと笑って城ヶ崎に向き直る。 「あ、あら? 城ヶ崎くん、偶然ね?」 「だと思う?」  思わない。もちろん思わないけど、それ以外の返しがあるなら教えてほしい。
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