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「うん。それは分かる気もするな」
総務にいれば、会社内の内情を目にする機会も多い。中にはどうして、ここまでしてしまったんだろう?ということを目にすることもあるのだ。
それはきっと城ヶ崎が言うように心の中のハードルが低くなってしまう、ということなのだろう。
優羽はとても納得した。
「そうか、分かるか。では優羽が悪くないということも分かるな?」
「え?」
「自分が悪いなんて考え方をするな。優羽は悪くない。二股なんてしてたそいつが悪い」
「あ……」
こういう時、本当に大事にされていると思うのだ。なにかあっても城ヶ崎はいつも優羽を大事にして優羽の味方でいてくれる。優羽の心もとても大事にしてくれている。
「ありがとう」
「本当にたまらないな、優羽。もう俺仕事に戻りたくなくなったんだが」
優羽は城ヶ崎から手を奪いかえして、軽くにらむ。
「だめよ、戻んなきゃ」
そして、今度は優羽から城ヶ崎の手をそっと握る。逃げないと分かっているからできることだ。
「今日はありがとう。とても美味しかったし、楽しかった。それにいろいろ、感謝してる」
優羽から手を握られて戸惑っていた城ヶ崎だったが、優羽の言葉を聞いて、眉を寄せて笑う。
「どこまで俺を好きにさせたら気が済むんだろう」
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