13.売られた媚びなら言い値で買う

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「ちょ……柴崎さんっ、離してください」 「話すだけだよ」  業務中の非常階段はあまり人通りもなく、静かだ。  優羽は柴崎の握る手を離し、ぎゅっと自分の腕を強く掴んだ。 「なんですか?」 「他人行儀だな」 「だって、今は他人です」 「次のオトコを見つけたから?」  その言葉を聞いて優羽は背中がぞっとした。  次のオトコなんて言い方をされたくない。  そうかもしれないけど、そんなことを口にしている柴崎は優羽と別の女性を二股かけていたのだ。 「イケメンなんだって?」  そう言って柴崎は優羽を壁に追い詰める。そのまま壁に腕を突かれた。いわゆる壁ドンな状態だ。  しかし、ときめくような状況ではない。 「やめて」  とても近い距離から優羽は顔を逸らす。  以前はとても好きだったはずなのに、悲しい思いをさせられて、しかも優羽が悪いかのように言われたのだ。ずっと傷ついた思いを引きずっていた。  それを癒してくれて、思い切り優羽を甘やかしてくれているのが城ヶ崎だ。  城ヶ崎と付き合うようになって、甘やかされて、愛されることはこういうことなんだと優羽は知った。それは今まで経験したことがないものだった。 「アイツ、誰?」 「あいつ?」
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