13.売られた媚びなら言い値で買う

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「ロビーで熱く抱き合ってたんだって? なんのドラマかと思ったって話題らしいぞ。社内でも噂になってる」  吐き棄てるように柴崎に言われて、優羽はカッと頬が赤くなったのを自覚した。  会社の人達に見られたかもとは思ったけれど、噂になっているなんてことは知らなかった。  その顔を見て、柴崎は口元に笑みを浮かべる。けれど、それは嬉しそうなものではなくて、優羽にはひどく不快に感じるものだった。 「へぇ? 優羽、そんな顔できんの?」 「そんな顔って……」 「恥ずかしそうで、一途そうでまっすぐな顔だよ」  優羽はキッと目の前の柴崎を睨みつける。言葉の一つ一つがいとわしく感じた。 「そんなこと言わないで」  優羽が柴崎に恋をしていた時は甘やかな気持ちになっていたし、一途に好きだったのだ。  それを裏切ったのは柴崎の方なのに。 「用がないなら戻るわ」  目の前の柴崎の身体を軽く押して、優羽はその場を離れようとした。なのに、柴崎は優羽の手を握る。 「離して?」 「あんな奴やめろよ」  そんなことを言い出すとは思わなくて、優羽は驚いて動きを止める。それをどのように勘違いしたものか、柴崎は言葉をさらに重ねた。 「また優羽と付き合いたい」 「な……」
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