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「ロビーで熱く抱き合ってたんだって? なんのドラマかと思ったって話題らしいぞ。社内でも噂になってる」
吐き棄てるように柴崎に言われて、優羽はカッと頬が赤くなったのを自覚した。
会社の人達に見られたかもとは思ったけれど、噂になっているなんてことは知らなかった。
その顔を見て、柴崎は口元に笑みを浮かべる。けれど、それは嬉しそうなものではなくて、優羽にはひどく不快に感じるものだった。
「へぇ? 優羽、そんな顔できんの?」
「そんな顔って……」
「恥ずかしそうで、一途そうでまっすぐな顔だよ」
優羽はキッと目の前の柴崎を睨みつける。言葉の一つ一つがいとわしく感じた。
「そんなこと言わないで」
優羽が柴崎に恋をしていた時は甘やかな気持ちになっていたし、一途に好きだったのだ。
それを裏切ったのは柴崎の方なのに。
「用がないなら戻るわ」
目の前の柴崎の身体を軽く押して、優羽はその場を離れようとした。なのに、柴崎は優羽の手を握る。
「離して?」
「あんな奴やめろよ」
そんなことを言い出すとは思わなくて、優羽は驚いて動きを止める。それをどのように勘違いしたものか、柴崎は言葉をさらに重ねた。
「また優羽と付き合いたい」
「な……」
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