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「また付き合いたいと言われたの。もちろん断ったんだけど、この前のロビーでのことが噂になっていると言われて、そんなに優秀な人は遊びなんだって、遊びなら自分でもいいだろうと言われて、とても怖かった。だって彼女がいるのに」
ぎゅっと強く抱きしめられる。
「遊びなわけないだろう。どれほど真剣か。優羽は知っているよな?」
腕の中でこくこくっと優羽は一生懸命頷いた。
「知ってる」
「俺の気持ちを疑ったわけじゃないな?」
それにはつい優羽もくすくす笑ってしまった。
「疑ってないわよ」
「それならいい。こうやって優羽を抱きしめるのは俺だけだ」
その声はとても強くて優しくて、優羽を包み込む腕はいつも力強くて温かい。
「大丈夫だ。安心してこうやって腕の中にいていいから」
ぎゅっと優羽は手を城ヶ崎の背中に回す。二人の体温が密着してさらに温かい気持ちになった。
「うん。ありがとう」
◇ ◇ ◇
そんなことがあった数日後のことだ。
「城ヶ崎先生」
姫宮商事で担当部署との打ち合わせを終えて、帰ろうとした城ヶ崎は法務部の女性に呼び止められた。
いつも書類などの受け渡しをしているので面識はある。
「はい?」
「あの……少々お時間を頂けますか?」
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