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その時点では業務とプライベートと半々だな、と城ヶ崎は思っていた。
「どうされましたか?」
エレベーター前のホールで足を止める。女性が城ヶ崎の前に立った。
「今度、お食事にお誘いしてもいいですか?」
女性は上目遣いに城ヶ崎に尋ねる。綺麗に施されたメイクと派手な雰囲気。学生の頃から城ヶ崎はこの手の女性に声をかけられることが多かった。
ちやほやとされている彼女たちは自分こそが城ヶ崎にふさわしいと思うらしい。
その時点でプライベートならお断りだとさっさと城ヶ崎は断り文句を口にした。
「プライベートなお誘いはお断りしているんです。けど、お声を掛けて下さってありがとうございます」
相手はクライアント企業の社員だ。これくらいの対応はいつものことだった。
さらりと流したのだが、その後がいつもとは違った。
「それって、うちの女性社員とお付き合いされているからですか? その件についてもお耳に入れておきたいことがあったんですけど」
「女性社員……」
「弊社の社員が、その……すごく城ヶ崎先生につきまとっていたって」
つきまとっていた?
逆だ。城ヶ崎の方が許されない方法で優羽に執着していたはずだ。
先日も優羽が社内で噂になっていると言っていたが、なぜそんな話になっているのか。
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