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そう言って笑顔を向けて、城ヶ崎はやってきたエレベーターに乗り込む。
どこで話を聞くとも言っていないのだ。誤解をするのは勝手だ。
しかし、気分はかなり荒れている。下へと降りる景色を見ながら、城ヶ崎は外を睨みつけた。
この前の柴崎の行動。広まっている悪気のある噂話。それに踊らされつつある一部の人物たち。
優羽を護るために城ヶ崎はすでに動くことを決意していたし、そのために頭を働かせ始めてもいた。
優羽のことを貶めたのは例の元カレとかいう柴崎という人物なのだろう。
優羽に強引に言い寄って振られただけでは飽き足らず、あちこちで根も葉もない噂をばら撒いているとは、城ヶ崎的には万死に値する。名誉毀損で訴えてやりたい。
とはいえ名誉毀損自体は一般的に証拠を集めることも非常に難しいものだ。最近は証拠集めも、優秀な記憶媒体がたくさんあるので、昔ほど困難ではないが、やはりハードルが高いことも間違いはない。
訴えるとまではいかないが、可能であればお灸を据えて、二度と優羽にちょっかいを出すような気にはさせたくないものだなと、城ヶ崎は姫宮商事のロビーを視線を集めつつ横切って事務所へと向かった。
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