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「そうじゃない。吉野、俺を突き飛ばしただろう? あれは立派な暴行だからな。なあ? もしも俺が訴えるって言ったらどうする?」
「ぼぼ、暴行っ!?」
思いもかけない言葉が出てきて優羽は焦る。
確かに突き飛ばしたことには間違いはなかったし、暴行だと言われればその通りだ。
「あの……でも私……」
優羽がいる総務部では退職に関わる業務を手伝うこともある。
実際に決定するのは人事だが、実務を行うのは総務部なのだ。
昨日までいた人が居なくなって片付けをする、もの悲しい気持ちが一気に優羽の中によみがえって、ついリアルに想像してしまう。
優羽が居なくなったデスクを誰かが片付ける。
それは妙にリアルに、優羽には想像できてしまうものだった。
確かに訴訟案件に関わったとなり、しかも加害者ともなれば、会社としてなんらかの処分が下らないとも限らない。
一流企業ほどコンプライアンスには厳しい。社会的な立場があるからだ。
優羽の両親は優羽が姫宮商事に入社したことを心から喜んでくれた。
そんな両親にクビになったとか、クビにはならずとも処分を受けたなんて話はしたくない。
「ゆっくり、話し合おうか?」
妙に嬉しそうな、けれど決して逆らえない笑顔で城ヶ崎はにっこりと笑ったのだった。
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