14.城ヶ崎弁護士の判断

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「そうですね。クライアントにも事務所にもご迷惑をかけるつもりはないですよ。迷惑がかかりそうだと思うならクビにでもしてもらって構わないです」 「する訳ないだろう」  間髪入れずに答えが返ってくるが、それは叔父としての情だけでないことは分かりきっている。  情だけに流されるような人ではないのだ。 「昂希には持っている資格をフル活用してもらう予定だからね。渡米もあること、覚えておいてよ?」 「あー……サンフランシスコですね」 「せっかくのカリフォルニア州弁護士資格だからな」  城ヶ崎は大学にいるうちに予備試験を受け、司法試験に合格し、卒業と同時に司法修習生となっている。  周りは年上ばかりの中での司法修習生だった。持ち前の頭脳の他、部活で鍛えた体力もフル活用した上でのかなり早期での資格習得だった。  さらに司法修習が終わったあとは即座に弁護士登録し、叔父の事務所に入所したのちそのままアメリカに渡らされた。  この時も叔父に「優秀なんだから、そのままカリフォルニアの弁護士資格取ってきてね」と笑顔で送り出されたものだ。  正直選択肢はなかった。  アメリカでは弁護士資格は州ごとで受験する。その中でカリフォルニア州の資格を取れ、というのはそこに多くの企業が籍を置いているからだ。
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