14.城ヶ崎弁護士の判断

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 城ヶ崎家の血を色濃く継いでいて、甥ながらも昂希は触れることも躊躇(ためら)われるほどの整った美形だ。  この甥っ子の溺愛する彼女というのはどんな人物なんだろうと大変に興味を持った。  ◇◇◇    その日優羽は課長にミーティングスペースに呼ばれた。 「吉野さん、困っていることはないですか?」  突然の質問だった。 (困っていること?)  今のところは特にない。仕事はとても順調だ。  上司からの仕事の依頼も適切だし、時折無茶振りはあるけれど、それもできない範囲ではない。通常業務の範囲だ。 「いえ? 特にはありません」 「そうか……」  なんだか課長の言葉が何かを含んでいるような気がして、優羽はそっと尋ねた。 「何か、ありました?」 「うーん、問題……ということでもないんだが……ほらこの前倒れたでしょう? だから大丈夫かなって心配しているんだ」  大丈夫ではないかもしれない人に「大丈夫?」と聞かない、というのは管理者研修で習うことで、優羽もその資料作成に携わった。  それを自然に実践している課長はさすがで、その思いやりに気持ちが温かくなる。  しかし、課長の表情はとても微妙なものだった。
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