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「僕自身はこういうことは個人の自由だと思うから立ち入りたくはないんだけど。吉野さんのことを信頼しているしね」
いつも割とはっきりと話す課長がまるで砂を噛んだような話し方なのが気になった。
「はい」
「吉野さん、お付き合いしている人がいる?」
優羽は途端に真っ赤になってしまった。思いもかけない質問だったからだ。
もしかして、以前のロビーでの様子を課長にも見られてしまったのかもしれないと思うと、城ヶ崎を叱りたい。
「い……います。あの、本当にこの前みたいのは絶対にしないでってお願いしますので」
「この前?」
「ロビーで見られていたのではなくてですか?」
「いや。来てたの?」
あの時のことが噂になっていると聞いたので、その件かと思ったのだが、課長にはきょとんとされてしまった。それでも優羽が言い出したことだがら、こくりと頷く。
「はい。お仕事で。案件と言っていましたけど」
課長は少し考える様子だ。
「何している人?」
「弁護士です」
「なるほどねえ……。吉野さん、柴崎さんと個人的なお付き合いがありましたか?」
──柴崎さん?
「……はい」
柴崎と交際をしていたかという質問に関しては、事実ではあるので優羽は戸惑いつつもこくりと頷く。
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