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この会社では社内恋愛は禁止されていない。コンプライアンスが遵守されているのなら、プライベートに踏み込むこともない。
一体、このヒアリングは何なのだろうか?
普段ならプライベートなことに踏み込むような会社ではないが、プライベートに踏み込むときはそれが問題行動だったときだ。
──何が? 一体何があったの?
そう思いついた優羽は一気に不安になった。
「課長、それは人事からの確認ですか?」
こくりと課長が頷いて、優羽は血の気が引く思いだった。
「あ、誤解しないでほしいんだが、君が何かしたわけじゃない。柴崎さんのことなんだ。実は君が倒れたときのことを確認させてほしいと顧問弁護士から依頼があって、社内でも調査したんだよ」
その顧問弁護士は城ヶ崎のような気がした。
「単に個人的なトラブルなら会社は関わらないんですけどね。君が過呼吸まで起こして倒れたとなると話は別です」
課長はさらに難しい顔になった。
「倒れる前、エレベーター前にいた社員にヒアリングしたんですよ」
それは知っている。優羽の同期だ。彼がおそらく優羽を救護室に連れていってくれたのだろう。
「吉野さんは非常階段のある扉から出てきたと言っていて、その証言からエレベーターホールに備え付けられている防犯カメラを確認しました」
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