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防犯カメラを確認したと聞いて優羽は驚く。
会社に備え付けられている防犯カメラではあるが、管理しているのは警備会社だ。
そこからデータを提供してもらうためには、本社決裁をしなくては開示されることはない。人の動きは個人情報にも関わることだからだ。
しかし会社が防犯カメラを確認するために決裁を下ろした。それだけ今ある問題が大きな問題だと会社が認識しているということだろう。
「柴崎さんは吉野さんの腕を掴んで無理やり非常階段に連れていったのではないですか?」
防犯カメラまで確認されているのだ。優羽に言うことはない。
そのときのことを思い出して優羽は無意識に自分の腕をきゅっと掴んでしまっていた。課長はそれも見ている。
「カメラ、確認されたんですよね?」
優羽の問いに課長は頷いた。
「人事がね。僕には権限がなくて見せてもらえませんでした」
それを聞いて優羽はさらに軽く目を見開く。
課長ですら権限がなくて見せてもらえないということは、このヒアリングは部長からの指示だということだ。
課長は話を続ける
「事実を確認しなくてはいけない。吉野さん、これは問題です。分かりますね?」
今までの様子から察しはつく。
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