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『吉野さんは倒れて、今、救護室で休んでいます。それをお伝えしようと思って』
「優羽が?」
先程までは間違いなく元気だったし、城ヶ崎にまで怒って見せていた優羽だ。
急激に体調を崩すなど、なにか重大な病気なのだろうかとか、不安げな藤井の声などにいろんなことを城ヶ崎の頭の中を走り抜けた。
『エレベーター前で突然倒れたそうです。過呼吸で』
「過呼吸……」
一時的に過度なストレスがかかった可能性があるが、その直前まで城ヶ崎の目の前にいたときはそんな様子はなかったのだ。
別れたあとになにかあったということだろうか。
「会えますか?」
『お仕事は大丈夫ですか?』
城ケ崎の仕事のことにまで気を配ってくれる藤井は本当に素晴らしいと思う。焦る気持ちを抑えて、城ケ崎はお礼を言った。
「気を遣ってくださってありがとうございます。でも、彼女より大事なものはない」
『ご案内します』
救護室までは藤井が案内してくれた。ベッドに寝かされている優羽は真っ白な顔色で目を閉じている。
それを見た城ヶ崎は胸が潰れそうだった。医師からは今は落ち着いているから大丈夫だと説明を受けたけれど、ここまでストレスをかけたものを絶対に許さないと強く思う。
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