15.利益相反

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 目を覚ました優羽に原因が例の元カレだと聞いて、どうしてやろうかと思っていた矢先に、社内で心無い噂を振り撒いているのもその男だという情報を入手した。  ──もう、俺が我慢なんてする必要ないよなぁ?  叔父である所長からも、クライアントに迷惑さえかけなければ何をしてもいいと許可は得た。  片桐が聞いたら「いや、なにをしてもいいとまでは言っていない」と言いそうなのだが。  今までの優羽や藤井、また法務部の女性の話からすると、その元カレとかいう柴崎という男にはまだ何かありそうだと城ヶ崎は察していた。  それは案件を抱えたことのある弁護士という立場だからこその勘が働いたのもあるだろう。  ──氷山の一角。  見えているのはほんの一部だけで隠れている部分の方が大きい。弁護士という業務の中では物事の裏側や隠れていたものがすべて見える瞬間がいくつもある。  そんな案件をいくつも見てきた城ケ崎だから分かるものだ。 (このままで済ますものか)  優羽は表立って大騒ぎする性格ではないが、だからといってもみ消されてしまっていい訳ではない。  顧問弁護士の立場を利用して、城ヶ崎は社内調査を開始する。
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