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人事部長の表情からはいい話とも悪い話とも表情は読めないが、特に悪いことの心当たりはなかったので、こんなもんなんだろうと言葉を待つ。
人事部長の手元には何やら分厚いファイルがあった。あれが人事考課のファイルなのだろうかと気になった時、部長が口を開く。
「簡単なヒアリングですので、気を楽にしてくださいね」
柴崎は部長の横に座っている男性に目をやる。
「先にご紹介します。弊社の顧問弁護士の城ヶ崎先生です。今回は立ち会っていただいています。実際にお話しするのは私なので、気にされなくていいです」
「なぜ弁護士が……」
「それはこれからお話することに関わりがあるからです」
これはいい話ではないとさすがに柴崎は察する。柴崎はなにも言うまいと心に決めた。
「総務部の吉野さん、ご存じですね?」
「はい」
「個人的なお付き合いがありましたか?」
「まあ……。それはプライベートです」
「そうですね。ただ、社内でハラスメントが行われたとすれば、話は別です」
「ハラスメント!? なんのことです!?」
思わず席から腰を浮かしかけた柴崎に座るよう部長は促す。城ヶ崎という弁護士はちらりと柴崎を見たが、その目が驚くほどに冷酷だったことに柴崎はぞっとした。
(一体何なんだ?)
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