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「先日、非常階段に吉野さんを連れて行ったのはどういうことですか?」
「彼女が話があると言ったからですよ。部長が先ほどおっしゃったように彼女とはお付き合いがありましたが、別れたんです。今は別でお付き合いしている人がいますが、彼女が僕とまた交際したいと言うので。その話でした」
「ふうん……つまり彼女の方から話があると言われた?」
「ええ。それはプライベートなことなのでこれ以上はお答えしません」
弁護士からひやりとした空気が流れてきて、柴崎はだんだんイライラしてきた。ヒアリングの意味も分からないし、城ヶ崎とかいう弁護士はやたらに表情がない。同席している意味も不明だ。
その時、その弁護士が口を開いた。
「本当のことを言われた方がいいですよ」
低くて地を這うような声だった。
「なんなんですか? 非常に気分が悪い。ヒアリングってなんのヒアリングなんです?」
部長は軽くため息をついた。
「柴崎さん、この人事ヒアリングは記録されています。あなたが声を荒げたり、暴言を吐いたりすればそれは記録されます。いいですね?」
なにか尋常ではないことが起きていることはさすがに柴崎も察していた。ふてくされたような表情をしながらも、席におとなしく座りなおす。
「で、なにが聞きたいんです?」
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