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「城ヶ崎先生のおっしゃる通りです。本当のことを話しませんか? 記録に残しはしますが、外部に漏れるものではないですので」
「プライベートです」
「プライベートでは済まされないからヒアリングに至っていると、あなたほどの人がなぜ気づけないんでしょうか」
「先ほどお話したことがすべてですよ」
城ヶ崎が口を開いた。
「それはあなたの中で、ということですか?」
柴崎はこの城ヶ崎とかいう弁護士にイライラする。入った時から無表情だったが、今やもう敵意にも近いものを感じるのだ。
「どういうことですかね?」
城ヶ崎は部長を見て、口をつぐむ。部長は口を開いた。
「先日、吉野さんが倒れました」
「へえ? 知りませんでしたよ」
「柴崎さんが非常階段にお連れになったあとです」
「は!? そんなの関係ない……!」
「連れて行ったのは認めるんだな?」
「先生」
部長に制されて、城ヶ崎は黙った。
「倒れたのは過呼吸です。原因を究明するよう社内で指示があり、エレベーター前の防犯カメラが開示されました」
口を噤んだ城ヶ崎だが、腕を組んで柴崎をまっすぐ見ていた。
その間も部長は淡々と話を進めていく。
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