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「ご存じないかもしれませんが、防犯カメラの開示には社長決裁が必要です。つまり、役員も開示が必要だと判断した上で、一部の役職員でカメラ画像を確認しました。その画像には柴崎さんが強引に吉野さんの手を引いて非常階段に連れ込む様子が映っていました」
「なっ……」
そんなものが出てくるとは思っていなかったのだろう。柴崎は顔色をなくして言葉を失う。
「暴行だ」
低い城ヶ崎の声に柴崎は声を荒げた。
「分かった! 顧問弁護士とか言ったな! お前が新しい優羽のオトコなんだろう! お前こそ職権乱用じゃないのか! 利益相反じゃないのかよ!」
顔立ちが整っているだけにすべての表情を消した城ヶ崎はひどく酷薄に見える。
城ヶ崎は柴崎を真正面から見つめて淡々と言った。
「職権乱用? 利益相反? 意味を理解してから使っていただきたい。私はこの会社の顧問弁護士で、依頼人はあくまで姫宮商事です。吉野さんでもないしあなたの依頼人でもない。弁護士を付けたいならご自身でお付けになることです。あ、私には依頼しないでくださいね。利益相反になるので」
絶対に依頼なんてすることはないと分かっていながら、一言付け加えることに柴崎はことさら腹が立つ。目の前の城ヶ崎はひやりとした目で柴崎を見た。
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