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「人事部長と私がここに一緒にいる意味を考えられた方がいい。まあ、記憶力に関しては相当に弱いようですけれど。連れ込まれたか連れ込んだかも覚えていないようですから」
「なんだと!」
席を立ちあがった柴崎に部長が鋭い声を上げる。
「柴崎さん!」
部長の声を聞いて柴崎はしぶしぶ着席する。
「城ヶ崎先生には弊社からお願いして、この場にいていただいています。それは後の処分が不当人事だと判断されないためです」
「処分……」
「吉野さんのことをきっかけに、社内では徹底的に調査が実施されました。柴崎さん、後輩の実績を指導だと言って自分につけたりしましたね。またそれ以外にもあなた自身が問題だと思っていなくても社内コンプライアンスに反しているもの、ガバナンスに問題のある行動が散見されました。事案の内容を鑑みて譴責とし、異動人事を発令します」
柴崎は崩れ落ちるように席にもたれる。
人事による調査が行われていたのは間違いないだろう。だから同僚の態度がおかしかった。
指導の範囲ならば問題ないと判断して後輩の実績を自分につけたことなど何度もある。指導しているのだから当然なのだと思っていた。
(コンプラ違反? ガバナンスに問題?)
「将来はどうなる……」
「譴責です。今回は吉野さんも大事にはしたくないとおっしゃったのでそれで済んだんです」
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